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小説 八宗綱要(第30話)【叡山論議・即身成仏の義】

即ちこの身、仏に成れりとは如何に

翌朝、最澄にも空海にも重要な用むきがあった。二人とも大学匠、一世の師表であるから、お互いの立場や妥協の仕方は良く知っている。求道者としての見解・意見は具にある。しかし、国家の権力者や規制の仏教界勢力があるなかに於いては、純粋無垢ではあり得ない。ある種の駆け引きが必要なのだった。

最澄はどうしても密教の法脈を欲していたし、空海にしても体得した密蔵の教えを天下国家に統合する道を模索していたのである。お互いに得難いものを持っていたわけである。それを半ば得てしまえば、その関係が崩れるのは目に見えている。だが、いまはお互いが必要なのである。

「・・・空海殿、よくおやすみになられましたかな?この叡山の済んだ空気は聊かの甘露の如きものでおざったのでないか?」
最澄は未だ本山を持たない空海に皮肉と期待をこめて言う。

「ほんとうに良い環境です。法師提唱の『止観の行』をば、修行するにはこのような山岳がよいのでしょう」
空海は何事も素直であり、それは誰も底を見たことのない湖のような性格・性質であった。要するに底が見えないのである。

「そう拙僧は本日、貴とい方にご指名をうけておりゆかねばならなくなりました。論議は次回として、挨拶もそこそこに出かけねばなりません。この通り非礼をお詫びします。つきましては、今日の談義は弟子がやりますのでご了解を・・・」

「そうでございましたか。わたくしも楽しみにしておりましたが、当方にも都合が生じ、弟子に託そうかと思っておったところです。今後の交流の要旨は今回で得心できようかと存じます」

最澄はこの談義、空海に分があることは分かっていたので、時間の無い中、一言だけ言った。
「空海殿、貴殿の提唱する、一乗成仏・速疾成仏と、拙僧の説く『円密一致』に優劣がありや。あればどこなのかお伺いしたい・・・」

空海は「これいよいよ大変なことになった」と思った。立ち話で済むようなものではない。少しの説明で委曲を尽くせる筈がない。それを知っていて最澄は自らの出発直前に、このことを口にした。それは自分のいないところで起きることを予測してのことだった。やはり最澄もすごい人なのである。

「あっははは、最澄殿もお人がわるい。この空海を困らせようと言うのでしょうか?そのような深遠な問いに仏祖(ぶっそ・お釈迦様)でも一言で応答できますまい。要は、お互いの論旨は論旨として、あたらしい平安京の仏教興隆を目指している、このことが教義を越えた教義なのではないでしょうか?」

最澄はすかさず、年下の更に無名の空海の手を握って
「空海殿、信じますぞ。今後の交流に期待しております」
と言った。
だが、おそらくは自分の弟子は空海の持つ心と知識の大海に多大な影響を受けるだろうな、とも思っていた。

「おお、最澄殿、一言だけ。我が師の教えを煎じ詰めれば『即身成仏の義・即ちこの身、仏に成れり』ということでおざる」

最澄は唖然とした。
「『即ちこの身、仏に成れり』・・・!?」
しかし、最澄は(髪の毛はないけれども)、後ろ髪ひかれる思いで、皇族貴族の居る所に急いで向かった・・・。


※この物語は仏教的小説であります。『八宗綱要』を元にして、清涼殿に於ける帝の御前での仏教論議を通じて仏教の教理を理解していただく為に書き下ろしたものです
※歴史的な事実によらずに書いていることを諒とされたい。
※第30話よりタイトルが解説『八宗綱要』から小説『八宗綱要』に変わりました。
※小説に説明は要らないのですが一言。この小説には修行の為のヒントが隠されています。読者がそれを解き実践することを希望しています。著者識

 

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