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解説 八宗綱要(16)【虚空蔵菩薩求聞持法とは(2)】

自然智と虚空蔵菩薩求聞持法

「良範さん、虚空蔵求聞持法という観心の法を知っているんですか?それは唯識に住する観法(禅定=瞑想法)と同じなんじゃないですか?そのことを教えてください!」
良泰は思わずそう叫んでいた。そしてその横で、いつもの姿勢で虚空を見つめながら話す良円にもこう言った。
「良円さん、そういう法があることをどうして隠していたんですか?それは受験と関係のないものだからですか?」

「良泰、おまえはまだ子供なんだよ。おれはおまえには冷静な判断ができないと思ったんだよ。受験とは関係ない。仏教の根本は『唯識』なんだ。おまえはそれをもっと学ぶ必要がある。それに『アビダツマ』だ。良範さんは、『三論・中観』それに『華厳』を勧めるのだろうがな。おれは『アビダツマ倶舎論』と『唯識論』の精妙さに仏教の深奥を見るんだ。だからおまえに今は黙ってそれを学んでほしいのだ。良範さんのような、いわば敢えて言えば不良の徒の影響を受けてほしくないのだ」

「良円さん、わたしはそんなに弱い人間ではありませんよ。良範さんがどんなに甘言を弄しても、そんなものにはのりゃしません」

「おう、甘言か。良円も良泰も、おぬしらはよう言うな。わしは今日は腹蔵のないところを言うと申したので、その言葉に偽りはないから、本当のことを言うぞ・・」
自然智宗という言葉が出たが、宗というほど、国から認めらたものではない。周りがそう呼称しただけだ。先の勤操さまもその一角の方であることは間違いない。自然智は、自然覚ともいい、本来人間に備わっている智慧のことだ。智慧を学習とかで開発するんじゃない。原初からあるものを明らかにしてゆく、それが自然智(自然覚)を得ることの意味だ」
「この流れは唐から来た、元興寺の神叡さまからはじまったのだ。そして唐で善無畏三蔵さま(天竺出身)から直接伝授を受けた道慈さま、その系統の弟子の勤操律師。そういう意味では確かにわしもこの流れのなかにいる。多くの俊英な者が山林に入り修行を積み、仏典の説くところの内証(さとり)を実現しようとしている」
「その中でも先駆的な猛僧がいる。それが最澄だ。東大寺で具足戒を受け僧になった。今は、比叡の山に法華一乗の遮那止観の道場を建てている。このことで仏教界は大揺れに揺れているんだ。要するに速疾(そくしつ)に『成三菩提』を得れると主張し始めたのだ。彼は独自の『一念三千』という理念を引っさげて登場したのだ」

「馬鹿らしい。何が一念三千だ。そんなものは華厳のパクリでしょう。速疾成仏なんかは観念的な成仏だという論法でしょうよ。まあ、時代遅れの『法華経』を最先端だというところに彼の憎めない一面があるとも言えるのだがな・・・」「ふんっ」と良円はそっぽを向く。

「確かにお前の言うとおり最澄殿は『一念三千』なんていう子供だましのようなことを言い出したが、それは全部唐の天台大師(ちぎ・天台智者大師ともいう)の受け売りだろう。一念三千の感応によって、成菩提(成仏)の速度は瞬時だと説くのだ。だが、彼も『止観の行』を山林に移住して行うという、この奈良の六宗とは明らかに違う方向性を持っている。三劫成仏というものを打ち破ろうとしているのだ」

「良範さん、最澄殿って、その方を直接知っているんですか?」良泰はいいところついた。

「・・・」

「どうなんですか」

「そうだな、まあ、知っているんだ」

「ええっ!」これには良円は驚いた、良泰はまだよく分かっていないが、良円はよく分かっていた。この頃の最澄と言えば、彗星の如く現れた、仏教界のスターだったのである。帝や貴族の一部とくに藤原氏一族の有力者から支持を受けていた、大才であったのである。先頃には唐に国費留学してきたという大立者だったのである。そのスターを良範が知っているという。その衝撃は大変なものだった。

「隠しても仕方がないのでいうが、わしを『年分度者』に推薦するといったのは最澄なのだ。彼はわしの南都における通暁した能力がほしかったんだろうな。元々、知り合いでもあったしな。そういう経緯で僧綱に成らないかという破格の条件をつけてきたのだ・・・」

「そりぁ、良範さん・・・」
良円の声は、羨望と嫉妬が入り混じったような、聞いたこともない複雑な音声であった。

「良範さん、虚空蔵菩薩求聞持法の解説ですよ、さあ」と良泰。

「・・・『虚空蔵菩薩能満所願最勝心陀羅尼求聞持法』というのが正式な名称だ。もちろん本尊は虚空蔵菩薩だ。この法を成就せば、聞持聡明になるという。要するに抜群の記憶力と文義の理解力が優れるということだ。主に山間などの閑寂な場所で修行する。この経典は善無畏三蔵さまが天竺から請来されたものであろうという。仏祖(お釈迦様)も尼蓮恒河(ガンジス川)の近くで悟りを開かれたが、そのときは明け方で明星が輝いていたという。そのことに因んでこの法ができたのではないかというのだ。明星は虚空蔵菩薩と等同と考えられているんだ」
「およそ、この菩薩の陀羅尼を100日間で100万返修唱するんだ。牛蘇加持という秘伝もあり、これは伝承する人師によって伝授を受けるしかない」

「その法が、唯識とどう関係があるのですか?」

「唯識を基盤に進化発展したといえる秘密経典があり、それに付属した法が虚空蔵菩薩求聞持法だと思われるからだ」
「具体的には、わしにも分からん・・・」

「なるほど。しかし、はぐらかさないで教えてくださいよ、良範さん」

「・・では言うが『月輪観』という禅観の修行法があるんだ。これが法相唯識観法をも超えるものだという言うんだな。虚空蔵菩薩求聞持法も、その前提として『月輪観』を体得しておらぬとできぬ、そう口伝されている。この観法の体得者は、よくよくでないと居らん。奥義を知る者は僥倖であり、教授している師匠は、昼間に星を探す如く難しいことなのだ」
良範は腕を組み、何かを思いつめるように虚空を見つめた・・・・


※この物語は仏教的小説であります。『八宗綱要』を元にして、清涼殿に於ける帝の御前での仏教論議を通じて仏教の教理を理解していただく為に書き下ろしたものです。 

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