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解説 八宗綱要(15)【虚空蔵菩薩求聞持法とは(1)】

虚空蔵菩薩求聞持法とは

「良円、ズバリ言ってくれたな。おぬしがそれくらいの情報をつかんでいることは分かっていたよ。世情の流れや仏教界の動向をよく考察しているおぬしが知らぬ筈はないからな。今日の勤操律師ご来訪の節の俺の待遇で、この寺でも立場が早々に知れてくるだろう。もう、そういう時期に来ているんだろうな。おぬし達の様な若い者が出てきているのはその証しだと思う。そこでだ、俺も今日は腹蔵のないところを述べさせてもらおう」

「やっぱりそうだったんですね、良範さん。わたしはね、かねてから貴方の噂は聞いていたんですよ。もっともロクでもない噂も多々ありましたけどね。しかし、接してみると貴方は大変な才能を持っている。だがね、どうも狷介不羈というか、そういうところがあって、わたしは癪にさわっていたんですよ」

「そうか。おぬしはそう思うだろうな。官僚型の思考だからな」と良範。

「それは皮肉ですか。それとも褒め言葉ですか」とまんざらではない様子の良円。

「どちらともだと思ってくれ」

傍らにいた良泰は、分からない言葉が出てきてじれったくなり
「二人とも、わたしにも教えてくださいよ。さっき良円さんが言った『自然智宗』とか、良範さんが言った『秘密宗』って一体なんなのですか?」

「うむ、そうだな。どこから話そうかな」
「講義のときに老師も言われていたが、この国の仏教界は、土台から揺れ動いてきている、法(ダルマ)としては、必ず『唯識論』を基盤として進展してくるとな。どういうことかというと、唯識の学問的追及から、今度は唯識観法を体得するための仏教へと大変化するということだよ」

「実はな、勤操律師の師匠、道慈律師さまは善無畏三蔵という『秘密宗』の導師から教えを受けたんだが、そのときに天竺(インド)の『瑜伽経(ヨーガスートラ)』というものも教授されたという。この瑜伽経には、具体的な観心・観法の階梯や技法が書かれてあるという。天竺の波丹砂理尊者の作だというが、厳密には仏教の経典ではない。しかし、仏教の方法が流れているという。わしもその伝を受けたんだが、次のようなものだ」
「およそ修道者の階梯は、八段階あり、制戒・内制・座法・調息・制感・凝念・禅定・三昧だ。制戒と内制が仏教の『戒学』、座法から禅定までが『定学』、三昧が『慧学』ということになる。唯識の学を基にした観心の法(観法)は、この三昧(三摩地・サマーディ・さんまい)ということになろう。但し瑜伽経と、唯識観法は見解の土台が違うので、内証(さとり)に相違があるのだが・・・」
「仏教では伝統的に、心を集中することを『止(シャマタ)』と呼んだ。その止を保ったまま諸相の実相を悟る法を『観(ビバシャナ)』と言ったのだな。おぬしたちもそのくらいは知っているだろう。法相の依経・解深密経の第六章『分別瑜伽品』では、止心・観察を詳しく説いている。瑜伽行派とは、この『止観の法』を修行していた学派だと言えるのだ」
ここまで良範は一気呵成に話した。

「良範さん、あなたはやはりさすがだ。そのさすがの人であるあなたが、そこまで分っていてどうして『自然智』なるものを求める『自然智宗徒』などと交わるのですか。いつでも世を恨み、ひねている徒輩がいるが、国の指定した学問所で修学できない者は、落後者だと思うし、そういう連中に最新の仏法など体得できるのでしょうかね。甚だ疑問だな。わたしは『アビダツマ倶舎論』における精緻な分析によって仏の道の真中を歩めると信じますがね・・」
「それに、その瑜伽経の説ですか、あるいは最新の観心の法にしても、そんなものは『アビダツマ』に詳細に説かれていますよ。瑜伽師ということを倶舎論でも説いています。法の一例として『骨鎖観』というものを説いている。三段階に観法を分けて、まず自他差別なく老若男女が不浄であると思う。最後は骨などに過ぎぬことを、身体の部分など観想してゆく。さらに身体の範囲を狭くし、あるいは全てのものまで無常であることを想う。第二第三段階では、意志的な努力をしないで、観じることを修める。さらに額の一点に集中しただけで、同じように成れるようにする。これを『止・観』の法と言わずして何をか言うのですか。このような修道をした人を瑜伽師といい、ずっと伝統的に存在していたのです。何もいまさら新しい『止・観』の法など必要ないでしょう」

「良円さん、そのあたらしい法を知っているんですか?なにか聞いたことがあるからそういうのでしょう。何なのですか?教えて下さい」

「良泰、おまえ道がそれるぞ。興味本位で近づいたり、縁ができるとロクなことがないぞ。でもそんなに知りたいのなら教えてやろう」
「秘密宗、否、『自然智宗』を名乗る連中は、どうやら『虚空蔵菩薩求聞持法』をやっているらしい」

「えっ、虚空蔵菩薩求聞持法!?」
この法の名前を聞いただけで、良泰の心の何かが大きく動いた。


※この物語は仏教的小説であります。『八宗綱要』を元にして、清涼殿に於ける帝の御前での仏教論議を通じて仏教の教理を理解していただく為に書き下ろしたものです。


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