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解説 八宗綱要(13)【勤操律師 =天竺直説の観心の法=】

『天竺直説の観心の法』

さて、いよいよ『成唯識論』の講義が始まった。例の三人も聴講している。これは翌月のことである。だが、良範のいる場所がいつもと違う。彼は最前列で聞くようなことはなく、さりとて一番後ろにいるわけでもない。目立たない席にいるのが常だった。しかし、今日は賓客の席におり、少し衣も違う。目立つのは、その横に居られる老僧である。見方によれば、我が師、良義僧都よりも貫禄がある。一体誰なのであろうか?良泰はそう思った。しかし、いずれ分るのだろうとも思った。

「・・・では『成唯識論』の講義を行うことにする。まず講義に先だって『唯識論』の伝播について述べておこう」
「唯識説は、天竺の土着教である毘奴土教というものが復興する時代に説かれたものだという。我が仏祖のみ教えも現存はしていたのは当然じゃが、八万四千の法門は各学派に分れて発展していたのじゃ。仏教は『空の思想』を基盤としつつ、独特の『唯識論』を構築した。弥勒菩薩(マイトレーヤ)さま、無着(アサンガ)さま、世親(ヴァスバンドゥ)さまが現れ、体系化したのじゃ。那良奴駄僧院の学頭であった護法(ダルマパーラ)さまが緻密精細に発展させた。ダルマパーラ様に習ったのが玄奘三蔵様であり、天竺(インド)に足かけ5年居られたのじゃ。その三蔵法師(玄奘)さまが長安に戻り、唐に『唯識論』の真髄を伝えた、とこういうわけじゃな。我が国の伝承過程は以前に申した通りじゃ」

「・・・法隆寺、興福寺、薬師寺などが中心となり、この学は今日隆盛を極めておるのが現状じゃ。このことは、そちたちも知るところであろう。我が勝安寺も規模は小さくとも学問所としては善い寺との評価を受けておる」老師は少々自慢げであった。

「この『成唯識論』はその過程で集成されたものじゃ。天竺・唐国の叡智の結晶といってよい。じゃからして、そちたちも是をよく理解せんといかん」
「いま我が国の仏教界は、土台から揺れ動いてきている。そちたちには、まだ分らんだろうが確実に変化してきているのじゃ。じゃが、法(ダルマ)としては、必ず『唯識論』を基盤として進展してくることは、ほぼ間違いないのじゃ・・・」

老師は一体何をいわれているのだろうか?良泰はそう思った。横にいる良円をみると腕を組んで瞑目し何かを考えているのが分る。敏感な者は肌でひしひしと感じているのだった。それにあの老僧・・・。

「おぉ、今日は大切な賓客をお迎えしておる。僧階はわしよりも下位ではあるが大変な御方じゃ。実際にはご自分で昇進をお断りになっておられる。『観心の法』の修行一筋であり、同時に大学匠でもある。天竺(インド)直説の『観心の法』を伝承されておられる類い稀な人師(にんじ)じゃ」

「・・・律師様、どうぞこちらへ。律師というのは僧侶でも最下位の僧階であるが、そういうことは悟りとは関係がない。まして三界の大導師であるか否かは、僧階などとは一致しない。さあ、律師様みなのものにひと言、佛縁(えにし)を与えてあげてください」
学問に厳しい良義僧都が、こうまで認めている勤操律師(ごんそうりっし)とはどういう方なのか?老師はまさしく平身低頭である。こんなお姿は見たことがない。

「わたしは勤操(ごんそう)、みな律師とか律師様とか呼んでいる。良義殿から、天竺の『観心の法』を伝えているとご紹介頂いたが、まさしく其の法を修めることを大眼目としている。唯識・中観を修めてこそ、この法(ダルマ)を体得することができよう。ここにおわす諸兄・衆僧には大いに期待している・・」
その声は凛々と響き、良泰はじめ若い僧たちの胸に突き刺さった。

「では講義に移る・・・」老師はそう言われて『成唯識論』の講本を開いて、おおまかな結構(けっこう)を説かれたのだが、良泰はもう耳には何も入らなかった。『天竺直説の観心の法』、この一言で参ってしまったのである。

講義の後、一人でぼんやりしていると、そのうちに庵の小屋に良範、良円が入ってきた。
「・・・おぬし何をしている。捜したんだぞ・・・」心配そうに二人は良泰の顔をみる。

突然、良泰は「ああ、驚いたな、もう!」いきなり大声をあげた。二人が小屋に入ってきたのが分らなかったのである。「いきなり大声出しおって、驚いたのはこっちだ!」と良円。


※この物語は仏教的小説であります。『八宗綱要』を元にして、清涼殿に於ける帝の御前での仏教論議を通じて仏教の教理を理解していただく為に書き下ろしたものです。 

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